楽聖ベートーヴェン。
ベートーヴェンといえば、耳が聴こえなくなるという苦難を乗り越え、交響曲第9番合唱付きや、交響曲第5番通称運命など、傑作をのこした偉大なる作曲家として、堂々と君臨する人物、というイメージが強いだろう。
わたしも長年そう思っていたその1人だったのですが、近年、ベートーヴェン研究がさらにすすんでおり、ベートーヴェンの新たな、というよりも、ありのままの姿が明らかになってきています。
この1〜2年で発行された何冊かのベートーヴェンの書籍を見て、わたしのベートーヴェンに対する意識はすっかり変わりました。
あまりにも偉大な、神のような存在であったベートーヴェン、から、とても気分屋で非常に人間味豊かな、困った人だけど憎めないベートーヴェン、そんな風に変わったのです。
ベートーヴェンとわたしの距離は、一気に近づきました。
ベートーヴェンの性格が実は…
従来のベートーヴェンと言えば、小学校の音楽室にあったあの肖像画の雰囲気のイメージが強いですよね。
強い目力でにらめつけ、口を固くむすび、無口で、人付き合いを嫌いそうな、お堅い雰囲気。あまり人間らしさを感じさせません。
いかにも、難聴を乗り越えた、運命を捩じ伏せた素晴らしい楽聖!っていう感じですよね。
わたしもずっとそう思っていて、すごいなあ、人間の普通持つ欲望とかいうものなんて持っていない聖人みたいな人だったんだろうなぁって思っていました。
それが、最近のベートーヴェン研究の本を読んだことでそのイメージはとんでもなく変わったのです。
人と関わるのが大好きで、とてもさみしがりや。
感情表現がとてもオープンで、大好きな友人、弟子への愛情表現がすごい!
甥っ子を溺愛していた。
女性が大好きで、熱しやすく冷めやすく、しかしいつも誰かに恋をしていた。
などなど、今までのお堅いイメージとはかなり違う印象です。
こうやってよくよく考えてみると、かなり困ったさんだな…という印象を抱きました。
でも、なぜか憎めない。そういう、とても人間味豊かな人物だったのだな、と。
ものすごく意外だな、と思いながらも、そいういえば、自分はある頃から従来のベートーヴェン像には違和感を感じていたな…という事を思い出したのです。
それをうっすら感じ始めたのは、中学校の時の音楽の授業がきっかけでした。
教科書に当然のように載っているベートーヴェンを学ぶため、なんらかのベートーヴェン特集のビデオをみることになりました。
その先生のもとでは、音楽の授業で交響曲第九番「合唱付き」の合唱部分をドイツ語で歌う練習をするなど、思えばベートーヴェン推しの先生だったのかもしれません。
ビデオは、楽聖ベートーヴェンが難聴に深く絶望し、苦しみながらもそれを乗り越え、何百年もの間、世界中の人でしらない人はいないのではないかという
くらいの超傑作「第九」を完成させたというものがストーリードラマ風に作られており、とても面白く、感動的に作られていて、わたしも深く感動しました。
ただ、そのストーリーの中に、何度も女性が出てきていました。
好きになってはフラれ、そしてまた新しい女性を好きになってはまたフラれ…そして、女性への熱い想いが名曲となって発露される…という。
どうしても、難聴という苦悩に立ち向かい、絶望から這い上がった素晴らしい偉人の部分をかなりクローズアップしているため、ビデオのまとめとしても、ベートーヴェンはこのように偉大なのだ、というかたち。
中学生のときの自分は、「なんか、意外と女性に影響されるタイプなのかな…?」というもやもやっとした気持ちを消化できぬまま、心の底にそのまま残っていたのです。
そして月日は経ち、ベートーヴェンの研究が進み、新しい成果が出たということなのでその書籍を読んでみました。
その時の、「…やっぱりね~~~!!!」という感覚ったら。
やっぱりベートーヴェンって、こんなに人間味あふれる人だったんだ!
とても身近に感じ、以前より格段に興味をもちました。
しかし、とても人間味あふれるといっても、ベートーヴェンの音楽は本当に凄いです。
あんなにエネルギーのある音楽、負けてたまるかという不屈の精神を持った音楽、ほかにあるかな、とあらためて尊敬の思いは高まります。
ベートーヴェン唯一のオペラ「フィデリオ」
偉大で、数々の傑作を遺したベートーヴェンですが、この楽聖ベートーヴェンでさえ成功できなかったといわれる分野があります。
オペラです。
当時、オペラで成功することが真の音楽家という風に見なされていたこともありますし、オペラの収益率の高さもあり、音楽家はこぞってオペラで成功したいと思っていました。
しかし、あのベートーヴェンでさえオペラでは大成できなかったのです。
オペラで大成功したモーツァルトとは正反対に、ベートーヴェンのオペラは「フィデリオ」ただ一つのみです。
オペラを作るにはモーツァルトのようなユーモラスで柔軟な精神の方が合っていたのかもしれません。
そんな貴重なベートーヴェン唯一のオペラ「フィデリオ」。
クラシック音楽好きな人にも、そうでない人にも、もっと知ってもらいたいものです。
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